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イルカの家

 

イルカの家

イルカの家

 

 16世紀イギリス。孤児となったタムシンは、ロンドンで鍛冶屋をする叔父一家に引き取られる。やさしい叔父夫婦のもとでも、タムシンの孤独感と海へのあこがれは、癒されない。だが、一家の次男ピアズと心を通わせることで、徐々に気持ちがやわらいでいく。そして、クリスマスに花が咲いた時、思いがけない喜びが・・・。サトクリフの初期作。地味で、展開が読めるが、一家のなんともいえない暖かな雰囲気と、家族一人一人のくっきりした個性、そして、チラリと登場するアン・ブーリンの姿など筆力のうまさが、際立つ。耐えつつ望みを手に入れる主人公は、サトクリフらしい倫理観が際立ってステキです。