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この楽しき日々

 

この楽しき日々―ローラ物語〈3〉 (岩波少年文庫)

この楽しき日々―ローラ物語〈3〉 (岩波少年文庫)

 

 ローラ物語第3巻。前の巻の終わりでにわかに学校の先生として赴任することになったローラのその後が描かれる。町から20キロは離れたブルースター開拓地。ブルースターさんの家に下宿しながら冬期4ヶ月の授業を受けもつ。生徒は5人。毎週週末になると、なぜかアルマンゾは馬そりに乗ってローラを迎えに来る。ブルースター家では、東部に帰りたくて半ばノイローゼになった夫人と、気弱な主人との、ほとんど会話もない、気まずい寒々とした家庭のありように、ローラは自分の家の暖かさ、居心地良さを再認識する。

ようやく学期をつとめあげ、家に帰るが、アルマンゾとはたびたびデートをすることになる。ローラは学校に戻り、町の店の手伝いをしたりしながら、教員免状を得る。

やがてアルマンゾはローラに求婚。ふたりは大慌てのささやかな結婚式をあげる。

感想

ローラの成長につれて、社会がどんどん広がってくる。この当時のアメリカの農民の暮らし、社会制度、状況が、俯瞰できるようになってきたのは、ローラの世界が同じように広がってきたからで、それだけに、逆に、読んだだけではわかりにくい部分も出てくる。ローラの子どもの頃の物語は、あくまでも子どもの目線で自分の周囲5メートルの出来事が描かれ、それで充足しているが、大人になった(といってもようやく18歳なのだが)ローラの周りには、教員免許だの、払い下げ農地だの、結婚だのといった別の世界が広がっている。ただ、あくまでも自分の目で見た範囲であるので、世界の広がりも地に足がついている。

世の中は広い、という事と対比して、家庭の温かさ、最後はアルマンゾとの満ち足りた関係が描かれ、深い満足を与えられる。