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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ホワイト・ピーク・ファーム

 

ホワイト・ピーク・ファーム

ホワイト・ピーク・ファーム

 

 小さな農場の日常を描きながら、普遍性を垣間見せるドハーティの筆致がすごい。農家のジーニーの家族は、昔大学の進学直前に母の病気のため、進学を断念した祖母、頑固な父、忍耐強い母、地味な兄マーティン、勝ち気な姉キャスリーン、まだ子どもの妹マリオンだ。父の癇癪には反発しながらも、この日常が続くと思っていたジーニー。しかし、まず祖母が去っていく。インドへ行くと言い出した、その本当の行先はホスピス。そして当然農夫になると期待されていた兄は、絵の才能が認められて美大へと進み、姉は父が激しく嫌う隣家のアレクと恋に落ち、結婚して出て行った。けがにより働けなくなる父、一人黙々と働く母。そしてジーニー自身も大学進学を勧められながら近所のコルに胸をときめかし、自分のしたいことがわからなくなる。穏やかな兄の中にある、狩人の残酷さ、耐え続けている母の中の情熱。もう一度絆を取り戻す両親。平凡な人間の中にあるさまざまな思いを、これだけ描けるのはすごい! の一言。