児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

もう悪口なんか言わせない

もう悪口なんかいわせない

もう悪口なんかいわせない

ダニーは、変わったところのある10才の男の子。赤毛のツンツンした髪の毛と、メガネ、矯正針金のついた歯に、大きな耳…
外見だけでなく、突飛なことをするせいで、クラスからも先生からも呆れられている。でも、ダニーには、やることにすべて理由があった。いじめられても平気だけど、廃品回収をしているお父さんのことを言われると、気持ちに制御が効かなくなってしまうのだ。

戦争反対の運動をするために、戦争被害者のふりをしてお金をもらうダニーに、静かな住宅街では、ちょっとした騒ぎになる。やる趣旨も勇気も素晴らしいが、何かが間違っている…それがダニーが、集団から浮いてしまう理由でもある。そんなダニーには、ダニーなりの言い分があり、彼なりの正義で動いている。読んで行くと、なかなかダニーのことが理解できないし、時にダニーをいじめる側の気持ちに近い自分もいたりする。それほどに、ダニーに何かを共感することは難しいのだ。

しかし、後半にダニーが、仲の良いクラスメイトと、作文を名前だけ交換し提出したら、クラスメイトは点数がよく、自分は悪かったということから、先生は自分を馬鹿な生徒だと決めつけているからなんでも真剣に取り合ってくれないのだ・・と指摘する場面では、ダニーが実は深く物事を考え、また人間を観察していると読者ははじめて理解するのだろう。