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ヒルベルという子がいた

 

 

ヒルベルという子がいた (現代の翻訳文学( 3))

ヒルベルという子がいた (現代の翻訳文学( 3))

とある孤児院に、病気を患い、周囲の人々に頭が悪い子供だと呆れられながらも、自分のしたい事や正しいと思う事に正直に貫き通して生きている、ヒルベルという少年がいた…。暴力的で、記憶することが不得意なため頭が悪いとされがちだか、時に利口な一面を見せるヒルベルを皆恐れて遠巻きにしている。理解できないものへの恐怖が、ヒルベルを孤立させて行くのだ。ヒルベルの目を通して見る、様々な不条理や、怒り、または世界の不思議さや、ライオンというヒルベルの空想の自由な美しさなどを淡々と語って行く。
児童文学ながら、まったくの爽快感がなくむしろ不安な暗闇だけが心に残る。でも、この不安な暗闇は成長の過程で大事な要素かもしれない。
 
孤児院の医師が、孤児を家族にしたと聞いて、なんとか自分を子供にしてもらいたいと願い、必死に行動を起こすヒルベルが切ない。『サイダーハウスルール』や、『冬の小鳥』の子供たちと同じように、暗い目で家族を求める切実さがただただ悲しいのだ。