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月の石

 

月の石

月の石

 

 母さんも父さんも、いつもなぜか忙しい。ニコライは家の中でひどく孤独だ。人が振り返るような美しい母。だけど、彼女は、贅沢に一生を送れる暮らしを求めて、ひそかに宝石泥棒を繰り返している。そして父は、アフリカの民族家具の輸入という仕事の裏で、ダイヤの密輸に手を染めている。ひいおばあさんのフロリンダが心の支えだが、おばあさんは、娘が息子(ニコライの父)を置いて家を出たとき、悲しみのあまり、娘に似た孫を引き取ることができなかった。飢えた思いを引きずる父。そしてロシアの皇帝の七つの宝石にまつわる謎が、一家を取り巻く。一方、もう一つの世界で、月の輝きが失われはじめる。光を取り戻すために必要なのは、七つの宝石、月の石。二つの世界が重なるファンタジーは、鏡によって結ばれる。そして、向こうの世界から、ついに巫女が訪れる! 切迫した飢餓感や恐怖感を感じさせるファンタジーだが、泥棒と密輸にいそしんだ両親は、これからどうするの?がちょっと気になるところでした。