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ほろびた国の旅

 

ほろびた国の旅

ほろびた国の旅

 

 大学入試を失敗した「ぼく」は、ふらりとでかけた図書館で、子どものころ、満州にいた時分に知っていた山形さんを見かける。山形さんが、今はない満州鉄道のキップを手にしているのを見ようとして追いかけ、切符を引っ張り合って転んだとき、昭和18年の満州についていた。それなりにリベラルな家庭で育った自分が差別している姿、いつわりの国の中で、日本人だけがいい思いをしている実態をみていく。ファンタジー形式としては、ありがちな夢落ちなのに、作品に力があるのは、懐かしい故郷が虚飾に満ちていたことを今知る悔いが、きちんと描かれているからだろう。