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ディッキーの幸運

 

ディッキーの幸運

ディッキーの幸運

 

 『アーデン城の宝物』の続編。孤児のディッキーは、足が悪く松葉づえなしでは歩けない。いじわるなおばさんと暮らしているが、おばさんは、ディッキーが大切にしていたお父さんの形見の「チリチリくん」とよんでいたガラガラを質に入れてしまった。庭に咲いたムーンフラワーと交換にチリチリくんを受けだしたディッキーは、家を飛び出し浮浪者のビールおじさんと会出会う。ビールおじさんは気が良く、ディッキーを大事にしてくれ、コンビの物乞いはいつも成功をおさめた。だが、悪い仲間のせいで強盗に引き込まれ、ディッキーは小さな体で窓から入り、中からドアを開けるように命じられる。幸い計画は失敗したが、ディッキーはビールおじさんと離れてしまった。そして、偶然並べたガラガラとムーンフラワーで魔法が動き出し、約200年ほど昔のリーチャード・アーデンという名家の息子としてタイムスリップする。その世界では足も悪くなく。教育を受け、スポーツを楽しめる。そこで、『アーデン城の・・・』のエルフリダとエドレッドの姉弟と会い冒険をする。だが、ビールおじさんが気になり、こちらに戻る。過去で身に着けた木彫りの腕で、おじさんと共に、堅気の生活を再出発させ、おじさんも犬のブリーダーの仕事をはじめるようになる。こちらが安定すると、再度過去へと旅立ち、姉弟が自分と同じタイムトリップをしてきたことを気づく。戻ってきて、こちらの世界で再会を果たした後。自分こそがむしろ本家の血筋であることを知る。タイムスリップして宝を手に入れ、領地の繁栄を取り戻した後、自分にアーデン卿の地位をゆずってくれた叔父(エルフリダたちの父)に爵位が行くように、自分は過去に戻るという。過去の世界は、丈夫な体とやさしい両親、弟がいるから、といい、それを実行する。この物語は、デイッキーの放浪生活が愉快だが、ちょっとヴィクトリア朝的(いい子が、大人を立ち直らせ、早く死んじゃう)な感じもただよい、なるほど翻訳されなかったわけだ、と思う。『アーデン城』のオマケかな。