山の開拓農家では、ネズミが出て困っていた。そこでねずみ退治の期待をかけて一匹の子猫がもらわれてくる。トムと名付けられた雄猫は、最初は頼りなかったが、成長とともに、心強い相棒になってくれた。住んでいるのは、トシちゃんとトシちゃんのお母さん、おにいさんのアキラくん。そしておかあさんの友達のハナおばさんの4人。都会から移ってきたみんなは、牛の出産を病気と勘違いしてしまうほどの素人だ。戦後の何もない時代の、作者の実体験をもとに描かれた物語。山の家から見送りに来ても、人家のある村には入っていかないなどのトムのこだわりや、ネコらしいふるまいなどが魅力。ただ、あまりに現代とは違う戦後の開拓の暮らしは、現代の子どもにどれだけ伝わるかが不安。