児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

だれにも話さなかった祖父のこと

 

だれにも話さなかった祖父のこと

だれにも話さなかった祖父のこと

 

 祖父の片手は三本の指が半分しかなく、もう片方は親指だけ、上唇はないも同然で、片耳は、ただの穴だった。祖父を見てはいけないと、母は言ったが、ぼくはついひきつけられてその姿を見てしまった。大きくなって、祖父のもとに遊びに行くようになってから、ぼくはその恐ろしいケガの理由を祖父から聞く。戦争で乗っていた船が撃沈され、負傷したまま戦友が救命ボ-トに乗せてくれたのが原因だったのだ。だが助けはなかなか来なかった。漂流の中で、戦友も、ボートの人間も次々に死んでいった。やっと救助されたが、こんな姿となったのだ。故郷に帰ってきても妻とぎくしゃくし、妻は出て行った。父をすてた母をゆるせなかった娘(それがぼくのママだ)は、母が許せず、家族はぐちゃぐちゃになってしまう。きちんと自分をみてくれる“ぼく”を愛してくれた祖父は、もう一度、家族が許しあって仲良くなることを願って息を引き取った。原題はHALF A MANで、邦題はちょっと違和感がある。「誰も話してくれなかった祖父のこと」ならわかるけど。薄い本で読みやすいが、その分ちょっと抽象的な感じになってしまってる気がする。