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海の島 ステフィとネッリの物語

 

海の島―ステフィとネッリの物語

海の島―ステフィとネッリの物語

 

 オーストリアで裕福な家庭で幸せに暮らしていたステフィとネッリ。だがヒトラー侵攻により、ユダヤ人の両親は全てを失い、娘二人をスウェーデン疎開させた。都会から、北の果ての島の寒村へ。姉妹は別々の家にひきとられる。明るい養母と子どもたちの中で、順応する妹ネッリ。だが、姉のステフィの養母は厳格で、クラスでも外国人としてイジメられる。優秀だが、進学の望みも断たれ、両親からは亡命したいが受入先がないという絶望の手紙が届く。両親を助けたいというステフィを助けてくれたのは、意外にも厳格だが実際的な養母だった。努力は実らないが、ステフィは養母への見方が変わる。そして家の犬が殺された日の恐怖を打ち明ける中、犬の置物を出来心で盗んでしまったステフィの思いも明かされる。両者の関係が劇的に変化することはないが、少しずつ歩み寄りステフィは成長する。援助の手があり進学の道が開けるところで終了。4部作の第1部。異国での自分のアイデンティティーの確立への惑い。姉としての責任感。両親への思いなど切々たる思いが描かれていて胸に迫る。