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酒天童子

 

酒天童子

酒天童子

 

 平安時代源頼光と四天王(渡辺綱坂田金時碓井貞光、ト部季武)が、安倍晴明の助けを借りて都の怪異に立ち向かう活躍を描く。「鬼の腕」「土蜘蛛」「鬼道丸」「酒天童子」「狐を射る」の連作的な4編が収録。古典をもとに再編集しているが、渡辺綱が、事実上主人公的に活躍し、金時が無邪気さでキャラを主張する以外は、四天王の後の二人はさほど個性を見せない。平安時代の怪異が生きている雰囲気が弱く、現代人のところに妖怪が現れたような印象が残念。そうした意味では短い「狐を射る」の、老いた頼光が狐に矢を当てることを強要され、みごと果たすが、狐を憐れむ物語がしみじみしていて個人的には一番良かった。頼光といえばむかで退治も有名なので、そちらも入れて欲しかった。気軽に読めるところはよい。