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時速47メートルの疾走

 

時速47メートルの疾走

時速47メートルの疾走

 

 自他ともに認める成績優秀でイケ面の慶一は、代々続く医者の息子。勉強以外を認めない親のプレッシャーで、放送部の部長をあきらめた。だが、助けがいると思った山本は、気付いたらきちんと部を掌握し、自分の出番がなくなっていた。そして体育祭でも、自分で引き受ける覚悟だった応援団長の仕事は、町平が引き受けてくれた。なにもかもできるはずだった自分は、見るだけしかできない人間になっていることに気づく「立ちすくむ人」、自分のために再婚するという母親の押しつけがましさに反発する美鈴は、偶然母親と再婚相手と行った中華料理店が同級生の町平の家であることに驚く。そして、運動会の応援団長をきめるじゃんけんで、さらに町平がかばってくれたことを感じる「見守る人」。体も大きく、ちょっと無神経な性格が災いして、いじめるヤツになってしまった小学校時代をくりかえさないつもりだったのに、ついノリで罰ゲームを設定して、町平がまじめに取り組む姿にあせる大門の「見守りたくなかった人」、そしてこの3人をつなぐ「疾走する人」ヒラマチこと町平。それぞれが、どうみられるかを気にしながらすれ違うさまの過剰さが、なかなかおもしろい。