児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

白い盾の少年騎士 下

 

白い盾の少年騎士〈下〉 (岩波少年文庫)

白い盾の少年騎士〈下〉 (岩波少年文庫)

 

 ヤロの助けで脱出したティウリは、ピアックと共に再びウナーヴェン国に急を告げる。重症を負いながらも使命を果たすが、奇襲に失敗したエヴィラン王は、兄である皇太子に決闘を挑む。勝利はするが、エヴィラン王の底知れない悪意によるつらい結末が待っている。だが、それを乗り越える希望のラストによってしっかりした作品になっている。中でも、ティウリが襲ってきた敵に反撃し殺してしまった時に感じる嫌悪。兄への憎しみに取り付かれたエヴィラン王にティウリが感じる憐れみ、イサドーロ姫とリストリディン騎士の間に通う恋の予感など人物がしっかり描いてあるところがとてもいい。特に、どんな理由があるにしても人を殺すことの恐怖をきちんと描いた点は、この手の冒険ものの中ではうれしい。