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浦上の旅人たち

 

浦上の旅人たち (岩波少年文庫(132))

浦上の旅人たち (岩波少年文庫(132))

 

 1969年初版。明治を迎え、名乗り出たキリシタンに加えられた大弾圧浦上四番崩れを題材とし、聡明でやさしいたみを主人公にすえ、苦しみの中の棄教、互いの争い、取り扱いに混乱した役所仕事、周りの人々を描く。成り行きで紛れ込む千吉の存在が魅力。千吉の視点をもっといれたらおもしろかったかも。西南の役から長崎の原爆まで広げなくてもよかったように思う。しかし、信仰にたいする迷い、棄教しなかったプライドの中に傲慢を見る自省など、深いものがあり、その点が魅力。