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川のほとりの大きな木

 

川のほとりの大きな木

川のほとりの大きな木

 

 ぬぷん出版1984刊『大きな木の下で』の新訳。

 

大きな木の下で (心の児童文学館シリーズ (2-9))

大きな木の下で (心の児童文学館シリーズ (2-9))

 

 父親が、停電の日の語る、幼い日の思い出。その日、悪魔がやってきた。親切から泊めた老婆と母親と、孫の赤ん坊。翌朝、赤ん坊だけが置き去りにされていて、しかも天然痘に感染していた。その子を捨てろ、と祖母はいうが、母には捨てられない。子どもたちを町ににがすが、町の人は、感染を恐れて子どもを追い返す。必死の看病で赤ん坊は助かるが、母も、語り手の当時の男の子も、赤ん坊の妹も感染し、妹は死んでしまう。後ろめたさで、ものだけは援助してくれるまちの人たち。当初は恐れているが、母が倒れた時に、おもわず境の川を越えてきてくれたモモおばさん。だが、実はモモおばさんこそ、親子を追い出したとき、ついこの家を教えてしまった後ろめたさを抱えていたのだ。やっと全員が回復した後、ずうずうしく「赤ん坊を返してくれ」とやってくる老婆、だが「この子は、うちの子」とみんなは、追い返す。母は、「なぜ天然痘とわかっている赤ん坊をたすけたのか?」ときかれて「わからない」と答える、助けないではいられなかった母親の姿が印象的。実話をもとにした物語だということがすごい。改訳されて、装丁も、訳文もちょっと硬い印象になったのが、やや残念。