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タスキメシ(2016.課題図書 高校生向き)

 

タスキメシ

タスキメシ

 

陸上部の長距離走で活躍していた早馬は、足の剥離骨折を契機に自分が走ることを恐れていることに気づいていた。そんな早馬は、担任の稔の畑の手伝いをした後、野菜を運んだなりゆきで、たった一人で料理研究部の活動をする都と出会い、料理の魅力にはまる。偏食の激しい弟に食べさせたいと、腕を磨き、駅伝に代る夢として、管理栄養士を目指しはじめる。だが、本当に陸上は終わりなのか? 常に前を走っていた兄への思いが消えない弟春馬。同じ部で、実は都が背負っている事情も知っている助川、ライバル藤宮。一生走り続けられないとしたら、どうすればよいのか? 自分が脱落すべきなのは今なのか? 迷う早馬の姿がいい。両親の離婚の中で、強気に生きてきた都の姿もわるくないが、ここまで家で不遇なら、もっと屈折していそうな気もする。男女が出てきて、ほとんど恋愛要素がないのも逆に面白い。春馬が大学駅伝を走るところからはじまり、最後に早馬の決断がわかる構成は、謎解きのようで読ませる。読む子には、中学生でも読みそう。