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少年キム 下

 

少年キム(下) (岩波少年文庫)

少年キム(下) (岩波少年文庫)

 

ついにキムの学校での日々は終わった。心から慕うラマとの再会。そしてクレイトン大佐から見習いとしての活動を命じられつつ、ラマと「矢の川」を求める旅が始まる。インドを味わいながら、臨機応変にみごとな活躍をみせるキム。ロシアのスパイを追って、キムはラマと共に高地に向かうが、ロシア人がラマの輪廻図に手を出そうとしたことからトラブルとなり、ラマはけがをしてしまう。敵の書類すべて押収には成功するが、キムはあらためてラマがどんなに大切な存在かと身に染みる。なんとか平地にもどるが、裕福なクルの老婦人のもとまでラマを無事に連れ帰ったところで、キムは過労で倒れてしまった。無事に、書類を渡してほっとするが、ついに自分の「矢の川」を見つけて悟りを開いたラマを見て、キムに本当の喜びが込み上げる。
自分の怒りを悔い、他者を傷つけてはならないと真剣に求めるラマの存在感が、ただのスパイ冒険ものを超えた読み物にしている。大地の上で眠る喜び、高僧にささげられる素朴な敬意、キプリングにしか描けない、内側からのインド賛歌がとても魅力。