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王子とこじき下

 

王子とこじき 下 (偕成社文庫 3075)

王子とこじき 下 (偕成社文庫 3075)

 

 やっと、ヘイドンと再会したものの、故郷にたどりついたヘイドンは、父と優しかった兄の死を知り、悪賢い弟が、自分を他人だといい、かつての恋人を妻にしているのを見て絶望する。とらえられたヘイドンと王子は、獄につながれ、些細なことで、恐ろしい罰を受ける貧しい人や、信仰の違いのせいで、やさしい女性が火あぶりにされる恐ろしさなど、国民の苦しさをつぶさに見る。いっぽうトムは、王の崩御により王位を継ぐことになるが、徐々に高貴な生活にも慣れ、こうした暮らしをうれしく感じ始める。だが、戴冠式に向かう道中で母親に会い、母を拒否しようとした自分への自己嫌悪に襲われる。戴冠式の土壇場で現れた本物の王子、だが、彼がほんものだという証は? 最後までドキドキさせるが、すべては無事に解決し、だれもが幸せに終わってメデタシメデタシ、でもこれはかなり社会風刺性が強く、それがなければおもしろみのない作品。それが、多少わかる年齢から読みたい。