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おとうさんのちず

 

おとうさんのちず

おとうさんのちず

 

 戦争でなにもかも無くして、両親と共にどろやラクダのフンでできたまちにたどり着いたぼく。ちいさなへやでよその夫婦と暮らし、土の上で眠り、本もオモチャもなかった。ある日、市場にいったお父さんは、食べ物ではなく地図を買ってくる。夕飯がなしになった僕はおとうさんをうらんだ。だが、次の日、壁一面に地図が貼られると、ぼくは地図に魅了される。飢えさえ忘れて、僕の心は世界中に飛び立った。ぼくはおとうさんは、正しかったことを知る。まるで「人はパンのみにて生くるものにあらず」の物語だが、実際に、心を羽ばたかせることとは、切実な要求であることを思う。