児童書評価のページ

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車いすからこんにちは

 

車いすからこんにちは (あかねノンフィクション)

車いすからこんにちは (あかねノンフィクション)

 

昭和31年、脳性まひという障害をもって生まれた内海光男さんは、まわりに迷惑をかけるという理由で、小学校に入ることさえ拒否されます。やっと8歳で入ることができたのは、訓練施設でもある寄宿制のゆうかり学園でした。やっと友だちを得ることができたものの、訓練によって向上が認められない体をもった光男さんにとって、訓練は苦痛だけが伴う無駄な時間でした。しかも訓練してもよくならないというので、学校から出され、5・6年の期間を家ですごします。やっと養護学校部中等部に入学でき、そこでも課される訓練をさぼって、自分が必要だと思ったトイレの自立訓練などに取り組みます。そして高等部のとき、弁論大会で障害者への差別や偏見をなくすことを訴え全国2位となります。卒業後も、脳性麻痺者協会に入り、そこで活動しながら自立を模索します。一人で動けるようにと電動車いすを手に入れ、電動車いすの乗車を拒否する鉄道へ粘り強く働きかけ、一人暮らしを始めるなど当たり前の暮らしへと一歩一歩前進させ、ついに就職し、結婚も実現します。そして、そんな生活も落ち着いた中で、みんなが平等に暮らせる差別のない社会とするために、学校に出向いて講演をする活動も開始するのです。車いすに乗ってもらって競争したり、直接触れ合うというさまざまな工夫はとてもみごと。ほんの少し前は、学校に行けないほどの差別があったという実態に正直驚きました。一緒に暮らせないことで、いわゆる健常者も不幸ですね。