野心的な石井桃子の評伝。従来、児童文学者として語られることが主だった石井桃子を、自立した女性として生きようとした若き文藝春秋での編集者時代や、スキーを楽しんだシー・ヨードラーの仲間、年下の恋人への思い、ノンちゃん牧場での過酷な開拓生活を描く。そこにあらわれるのは、有能で冷静なモダン・ガール。自分を律するがユーモアを渇望し、自分が何者になるのかを最後まで求める貪欲な姿だ。それに切り込んでいく著者の執念も感じる。岩波の少年文庫や岩波子どもの本が40代の仕事で、渡米が47歳、普通のひとが仕上げにかかる時期から新たなチャレンジを始めるような姿がスゴイ!