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紅に輝く川

 

紅に輝く河 (角川文庫)

紅に輝く河 (角川文庫)

 

 ファスール王国は、神官が力を持ち、国母が求心力を持つ女系国家。ところが国母と第二王妃が、ほぼ同時に出産して共に女児を生んだとき、不思議な占いがでた。第二王妃の娘は国母になる、国母の娘は国に危機きた後に国を救うという占いと、国に仇なすという占いがでたのだ。二人は、王妃たちにも秘めてすり替えられる。女系の国では、王妃もいとこ同士のため、互いに似ていて誰も気付かぬままに成長するが、第二王妃の子として育ったアスタナは、人の運命や名前がふと浮かぶ不思議な勘のよさを持ち、学問好きで自由奔放に育つ。鎖国的な政策をとるファスール王国にシーハン公国からやってきた留学生サルー。実は、彼はかつて時期神官長と目されながらアスタナが国に仇なすのを心配してアスタナ殺害を試み、国外追放になった神官ミーランの息子だった。南部と北部の地域格差、不作さえ蓄財のチャンスとして買い占めをする商人。第二夫人の座に不満を抱くカミーナと次期神官長を狙うモードンが結託して罠を張る中、民の幸せのためにアスタナは動く。下町で子どもを教えているタルダンなどサブキャラもなかなかよい。政治的な動きを物語の中に織り込んでいくこうしたエンタメ。とりあえず3部作はこれで終了のようですが、まだ続けようと思えば続けられそう。