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旅のお供はしゃれこうべ

 

旅のお供はしゃれこうべ

旅のお供はしゃれこうべ

 

 古物商「大黒屋」の一人息子惣一郎は、おっとりと育ち人柄もよいが父のような商売の才がない。だがある時、父から頼まれて大切な茶碗を受け取る旅に出る。ところが、高額な名工の作品というので、魔が差したか、供につけてもらった市蔵が裏切り、惣一郎の金と茶碗を奪って出奔。このままでは家に帰れないと絶望して山に迷い込んでいた時、しゃれこうべの助佐に急に話しかけられた。狐の十六夜が化けるときに使っていたおかげで、霊力が宿り、しゃべれるようになったという。当初驚き、気味悪がった惣一郎だが、彼を励まし、市蔵をつかまえようという。助佐は、軽業の親方から逃げる途中でがけから落ちて死んだのだという。しゃれこうべがしゃべる見世物「野ざらし語り」で路銀を稼ぎ、江戸に着くと。今回の事件をネタにして見世物を行い、思わず見に来た市蔵を捕まえる。なんと茶碗は名工に焼いてもらった父の作で、売れずに無事に取り返し、帰宅。だが、元の暮らしでは助佐とは自由に話せない。そして助佐から妹の存在を打ち明けられ、その妹を探し出すことで、助佐は成仏する。さいご、大人になった惣一郎が、父の才がなくても、奉公人の助言をよく聞きながらみんなで商うことで店をきちんと継承したことが語られる最後まで、バランスよく描かれている。デビュー作だが、構成がしっかりしている中でユーモラス。読みやすいし、読みなれない子にもいいと思う。