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パール街の少年たち

 

パール街の少年たち

パール街の少年たち

 

 児童文学の古典でハンガリーの作品。都会の片隅の原っぱをめぐって、少年たちがたたかう物語。フェアフレイで真剣に戦う様子は、気高ささえ漂うが、同時にそれは銀紙をまいた槍をもつごっこ遊びの世界でもある。こうした真剣なごっこ遊びは、今はなかなかできないかも。とりわけ、いつもは味噌っかす扱いのちびのネメチェクが、病気をおして真剣に戦いに参加しようとして、最後は命を落としていくようす、そしてたった一人の息子の死を目前にしながら仕事をしなければならないその父の貧しさ、せっかく守った空き地が住宅地にされてしまうラストはさすがの迫力で、貧しかった時代がもっていた悲劇的ではあるがある種の気高さが残る。