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海と十字架

 

海と十字架 (偕成社文庫 (3111))

海と十字架 (偕成社文庫 (3111))

 

 戦国時代が終わり、キリシタン禁制が始まった時代を背景に少年たちの生き方を追う時代小説。孤児で下人(奴隷)として働いていた伊太と弥吉は、逃げ出して大阪行きの船に密航したつもりでマカオに行きの船に乗り込む。そこで店をまかされている小鉄に助けられ、日本人修道士の少年マチアスとも出会う。だが、伊吉は家族が殉教した過去を持ち、キリスト教に激しい反発を感じているが、彼の穏やかな性格に感化される。帰国した弥吉は店の小僧として元気に働くが、伊吉は、小鉄を陥れて殺した船乗りの黒市に恨みを募らせる、しかし実際に黒市を追い詰めたとき、なぜかマチアスが止める姿を見て殺せない。その後マチアスは、東北に流されたキリシタンを資金援助ため密かにに来日し、伊吉はそれをサポートする。人は良いが小心でお金の援助はするものの、直接的ではないにしろ密告に近いことをしてしまう弥吉、一時は自信を失うものの、さいごまで日本のキリシタンと共にいることを選ぶマチアス、激しくまっすぐに生きる伊吉と、それぞれの生き方が魅力。