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国境まで10マイル

 

国境まで10マイル―コーラとアボカドの味がする九つの物語

国境まで10マイル―コーラとアボカドの味がする九つの物語

 

 メキシコとの国境近いテキサスを舞台とした短編集。テキサスはメキシコからアメリカ領になった地域で、スペイン系メキシコ人の伝統が色濃く残る地域だ。「パパ・ラロ」は最初は反感を持っていたが徐々になじんでいった、スペイン語しか話せないような異文化の祖父との関係で歴史を反映している。タイトルの通り、国境は近く、国境の向こうには貧しい生活が広がっている。国境を越えて働きにくる家政婦カタリーナの「もう一人のむすこ」はメキシコとの格差がテーマだが、カルフォルニアなど他州に比べるとテキサスは田舎で貧しい。その二重構造がちょっと切ない。ただ、日本では「アメリカ」の中の州による違いの理解や国境を接する感覚がないため、主人公たちの思いがわかりにくい面があるかもしれない。