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犬になった王子

 

犬になった王子――チベットの民話

犬になった王子――チベットの民話

 

 穀物を手に入れるために、九つの山と九つの川を越えて冒険に行く王子の物語。蛇王のところに潜入して穀物の種を持ち出そうとするが、失敗すれば蛇王に犬にされてしまう。王子も穀物を持ち出すことに成功するが、帰ってきた蛇王に犬にされた。元の人間に戻るためには心から愛してくれる娘が現れなくてはならないといわれる。犬として美しい娘に出会い、ともに大麦を育てた。娘は、婿を選ぶ儀式で、涙を流す犬に思わず近づいてしまう。元の人間に戻るために、撒いた麦の後を追ってほしいと頼む犬の後を追って、娘は大麦の後をたどり、ついに王宮で人間となった王子と再会する。絵が繊細だが、個人的には、もう少しチベットの昔話としての素朴な力強い雰囲気の絵でみたかった。しかし、芽を出す大麦の後をたどってついに王子と出会うところはとても印象的で魅力ある昔話。