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フラダン

 

フラダン (Sunnyside Books)

フラダン (Sunnyside Books)

 

 男子高校生がフラダンスをする話、と思ってページを開いたところ、背景にフクシマの被災と放射能の問題が描かれていてびっくり。だけど、それがごく自然な形で、それぞれの人物の背景に描かれているのがよかった。部活の上下関係のゴタゴタが嫌で退部した辻本穣。そこにフラダンス愛好会への入部勧誘を猛烈に仕掛けてくるのが部長の詩織だ。男のフラダンスなんてありえないと思っていたのに、海外からのさわやかイケ面転校生柚月宇彦(イエヒコ)に引っ張られ、同級生でちょっと心惹かれるマヤがいたことからフラダンスの世界に入り込んでいく。踊る大変さと楽しさ、慰問ステージで喜ばれたことの感動。徐々にフラダンスにのめりこんでいくが、仮設住宅への慰問公演の中で、いくら慰問されても5年もたっても何も変わらない現実の中で絶望している仮設の住人達から拒否されたことで、いつも底抜けに明るい詩織は、大きなショックを受ける。実は祖母と暮らしてる詩織。過去に飼い犬が津波で死んでしまったのに「そんなこと」くらいで泣くなんておこがましくて泣けないマヤ。実は父が東電の社員だった1年生男子薄葉。それぞれが思いを抱いてクライマックスのフラガール甲子園に挑むところは、素直にわくわくする。ちょっとおすすめ。