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岬のマヨイガ

 

岬のマヨイガ (文学の扉)

岬のマヨイガ (文学の扉)

 

 あの震災直後、避難先の体育館で出会った3人。介護施設に入るはずだったキワおばあさん、DVの夫から逃げてきたゆりえ、両親が死に叔父にひきとられるために来た萌花。キワがゆりえと萌花を嫁と孫だといったことから、二人は結(ゆい)とひよりとなり、3人は狐崎で一緒に暮らし始める。キワが語ってくれた昔話の中の“マヨイガ”は、道に迷った人を暖かくもてなす家。だが、狐崎にはアガメと海ヘビ人々を害し、封じられた昔話があり、津波でその封印が解かれてしまった。海からくるおそろしいものを防ぐために、遠野からカッパが、東北の各地から地蔵が助けにきてくれる。ひよりは言葉を話せなくなってしまっているが、他にもそういう子がいるため特別視されないと、サラリと語られる中に、この地の津波の恐ろしさを感じる。クライマックスは、ついに海から恐ろしいものが上がってくる時。恐ろしいものは、その地を離れた近しいものの姿となってみんなをおとずれる。未来ではなく、過去に目を向けさせるために・・・。偽名でどこまでだいじょうぶなのか? 生活費は大丈夫か?と現実的な心配もしてしまうが、あれだけの直後だと、逆に大丈夫だったかも、と思ってしまう。3.11の後で震災をテーマとして書かれた児童文学の中でもおすすめの作品。