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ぼくはO.C.ダニエル

 

ぼくはO・C・ダニエル (鈴木出版の児童文学―この地球を生きる子どもたち)

ぼくはO・C・ダニエル (鈴木出版の児童文学―この地球を生きる子どもたち)

 

 2017年エドガー賞児童書部門受賞作。主人公のぼくことダニエル・リーは13歳。ちょっと変わり者だけど、頭が良くておとなしい男の子と思われている。でも、はっきりいって変だと自覚している。「儀式」をしないで寝たら死んでしまうから、どんなにつらくてもやめられない。成績はいいのに書けない数字があるから数学だけはだめだ。スポーツが得意な幼馴染のマックスにくっついてアメフト部に入り(もちろん控え選手!)、何とか無事に教室でいじめられすにすごしている。だけど、ここのとこまさかの事態が連続。まず、サイコ・サラと呼ばれている補助教員付きで誰ともしゃべらないサラが、いきなり話しかけてきた。サラのお父さんは行方不明になったんだけど、殺されたに違いないから捜査を手伝ってくれというんだ。一方、あこがれていた女の子ライヤと一緒のグループになったことがきっかけで急接近。知的で優しいライヤが、ぼくを認めてくれるなんて本当だろうか? そしてけが人が出て、突然アメフトレギュラーに入れられてしまう。緊張して失敗間違い無しなのにパパは大喜びだ! はたしてサラのパパは、本当に殺されたの? ライヤとの恋の行方は? アメフトの試合はどうなる? ここにさらにダニエルが書いている世界中から人が消えてしまう物語が作中作としてからんでくる。作者はダニエルと同じO・C・D(脅迫性障害)。自分でも、なぜ自分はこんなことをしてしまうのかと悩みながら成長した経験を込めて家族、友人、学校の中で暮らす一人の男の子の成長を描いている。ごく平凡な両親、とりわけアメフトしか関心がないと思っていたパパが、どう接していいかわからなくて、懸命にアメフトの話題で近づこうとしてくれたことに気付くラスト、思春期でイラつきながらもアドバイスをくれる兄。物静かでちょっとダニエルに似ている妹。幼なじみであけっぴろげな性格のマックスなど、周りの人物像もしっかりしていて魅力的。