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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

レモンの図書室

 

レモンの図書室 (児童単行本)

レモンの図書室 (児童単行本)

 

 カプリソは、ママが早く亡くなってパパと二人暮らし。本が大好きで、本さえあれば友だちはいらないと思っていた。パパも強い心があれば大丈夫というのが口癖で、いつも書斎で校正の仕事やレモンの歴史の本を書いている。だけどある日、転校生のメイが話しかけてきた。最初は断わるが、まもなくメイが自分と同じように本が大好きなことに気づき二人は急接近していく。両親や弟がいて、けんかをしたり何かあればママが抱きしめてくれるメイの家族の様子に、カプリソは衝撃を受ける。パパは、怒ったりはしないが、しょっちゅう家事を忘れ、カプリソが注意していないと食事も忘れてしまうし、決して抱きしめてくれない。カプリソとメイは、一緒に小説を書いたり、メイの庭で秘密基地を作ったりとますます近づいていくが、メイの家族にも親しくなればなるほどカプリソはパパに何か問題があると思わざるを得なくなっていった。そしてある日、ママが残してくれた本棚の本が、レモンのために物置に押し込められたことを知ったカプリソは、爆発してしまう。カウンセラーが《大人を世話する子どもの会≫へと誘ってくれ、カプリソは自分の家の問題を客観的にみるように変わっていき、妻を失ったことでパパの心が閉ざされ、開けるのを恐れていたこと気づく。メイの両親やカウンセラーのおかげで、パパはよくなっていくが、何年もかけて完成したレモンの歴史の本が、どの出版社からも出版を断られたことで、様子がおかしくなってしまう! しっかりした本好きの女の子が、友だちがいる喜びを知り、家族に愛される幸せに憧れる。現実は厳しいが、少しづつ道を見つけていくところが魅力。