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友だちになれたら、きっと イスラエルとパレスチナの少女の文通

 

友だちになれたら、きっと。―イスラエルとパレスチナの少女の文通 (この地球を生きる子どもたち)

友だちになれたら、きっと。―イスラエルとパレスチナの少女の文通 (この地球を生きる子どもたち)

  • 作者: ガリト・フィンク,メルヴェト・アクラム・シャーバーン,リツァ・ブダリカ,いぶき けい
  • 出版社/メーカー: 鈴木出版
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本
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 ギリシア生まれのベルギー人女性リツァが仲介することで、1988年イスラエル人のガリトと、パレスチナ人のメルヴェトという二人の女の子が文通を通じて友だちとなった。住んでいるのはわずか15キロほど隔てたところだが、まるで別世界で互いの家に行くのは不可能。だが、二人はごく当たり前の女の子として、家族のことや、自分が好きなこと、将来の夢などを語る。だが、ガリトはテロの恐怖の中で、自分は大きくなったら兵士になると言い、メルヴェトも難民キャンプへの弾圧、外出禁止、親類の不当逮捕などで石を投げずにはいられないと語る。互いのことは悪いと思わないと言いつつ、二人の対立は徐々に深まり、1991年に一度だけ14歳と15歳の二人は中間地点でひっそり会うことができたが別々の道に分かれていった。その後、1997~98年にかけて、リツァはそれぞれと再会する。結婚し、離婚してシングルマザーとなったガリト。メルヴェトも結婚をして2児の母になっていた。ガリトの方がよりニヒルになり、つまらない土地ならパレスチナ人に渡してやってもいい、という物言いをするなどちょっと傲慢になってきた気がする。メルヴェトは幸せな結婚生活で落ち着いているためもあってか、まだガリトに優しい思いを抱いているように見える。同じ人間同士なのに、憎しみが育っていくさまが良くわかる。現在、トランプがエルサレムに大使館を移転したことでもめているが、この解決はいったいいつになるのだろう? イスラエルで、許可を得て出入りするアラブ人に白い印をつけさせようとしたとき、それはユダヤ人がダビデの星を強制されたのと同じになると反対意見が出たそうだが、迫害経験のあるユダヤ人だからこそ、いきなり追いだされる辛さはよくわかると思うのに。戦争して得なことなんかないのに、そうはいかないというのが恐ろしい。