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遠い親せき

 

遠い親せき

遠い親せき

 

作者の自伝的な作品。第2次世界大戦が終わり、強制収容所から生き延びることができたウーリーと弟のイグアルは、イスラエルキブツ(集団生活をする)で暮らす生活をおくっていた。母親は殺され、父親は行方不明。そんな二人あてに手紙が届く。二人の母親の姉の夫の兄、という遠い親戚にあたる人だが、二人が生き延びたのを知って連絡をくれたのだ。ウーリーはなんとかしてその人に会いに行きたいと願うがお金はほとんどない。キブツから出るトラックに乗せてもらい、途中からバスでなんとかたどりつけるともくろむが、先生にはないしょだ。深夜に弟と共に抜け出し、トラックから降りた後、夜の街で雨にあって途方に暮れ、助けを求めた家から警察に通報されるという目にあうが、なんとか身に証を立てて、朝とともに親戚の家にたどり着く。そこで暖かい歓迎をされる二人の喜びがなんともいえずほっとする。よく考えれば遠い親戚だが血のつながりもない夫妻が、過酷な戦争を生き残った縁者を大切に思うというのは切ない。それほど縁者を失ったのではないか? ウーリーとイグアルが、自分たちを受け入れてくれるかと不安な中で、到着し、一人でドアを叩けずに二人で一緒にドアを叩くところに二人の絆が、そして開かれた扉で生まれた新しい絆に希望を感じる。