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戦争を取材する 子どもたちは何を体験したのか

 

世の中への扉 戦争を取材する─子どもたちは何を体験したのか

世の中への扉 戦争を取材する─子どもたちは何を体験したのか

 

 2012年シリアでの取材中に銃撃で殺害された山本氏が、その前年に出版した本であるため、本の著者紹介にはそのことは書いてない。戦争の現実、地雷、少年兵、戦争体験のトラウマ、難民などのさまざまな問題を、子どもにわかりやすい平易な言葉できちんと伝えようとしている。ただ、多くの問題が取り上げたことで、ちょっと羅列的になってしまっているようにも感じた。自分のジャーナリストという仕事の意味を真剣に考えた冒頭のように、もう一歩、それぞれの内容に深く踏み込んでもらっても良かったように思う。たとえば少年兵を社会復帰させるプログラムについてなど、攻撃的だったターティを紹介しながら書いてはあるけれど、人を殺すという恐ろしいハードルを越えて、麻痺していくようすを一般化した形ではなく、ターティの体験として、個別の人間に起こったことなんだと語って欲しい気がした。始めてしまうと、終えるのが難しい、また、終わったはずでも憎しみが残り終わらない戦争の恐ろしさが、子どもたちに伝わって欲しいと思う。