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セロひきのゴーシュ

 

セロひきのゴーシュ (福音館創作童話シリーズ)

セロひきのゴーシュ (福音館創作童話シリーズ)

 

 ゴーシュは、町の楽団でセロ(チェロ)を担当していますが、下手なので楽長に叱られてばかりいます。夜、家で練習しているとねこ、かっこう、たぬきの子、野ねずみが順に一晩ごと訪ねてきて、ゴーシュにあれこれ注文をつけたり指南を請うたりしていきます。ゴーシュは、「生意気だ」と腹を立てたり「これはおもしろいぞ」と思ったりしながら動物につき合って練習を重ねるうち、自分では知らぬまに腕をあげ、演奏会のアンコールに一人で出て演奏を成功させるまでになるのです。
瀬田貞二さんのあとがきには、宮沢賢治作品の中では最もわかりやすく「かなり小さな子にまで楽しまれ」とありますが、私自身の経験や周囲からは、子どもの頃は「こわい話だと思った」「よくわからなかった」という感想を聞きます。おはなしを語るようになって気づきましたが、この作品は声に出すとわかりやすさも面白さもぐんと増します。子どもには、ぜひ読んであげてください。