児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

 

泥 (児童単行本)

泥 (児童単行本)

 

 森に囲まれた私立校ウッドリッジ・アカデミー。5年生のタマヤは悩んでいた。まじめで勉強熱心な自分の性格をみんながバカにしているのが感じられるからだ。金持ちで悪い噂が多い上級生のチャドみたいな子がみんなから一目置かれているのだ。そしてマーシャルは、ふとしたことでチャドにからまれ、クラス全員からシカトされる立場になっていた。タマヤとマーシャルは家が近く、タマヤの親は上級生のマーシャルに登下校の時同伴してくれるように頼んでいた。だがある日、チャドの待ち伏せをさけるためにマーシャルは森を抜けることに決めタマヤもついてきた。だが、チャドが気付いて追ってくる。チャドに組みつかれたマーシャルを助けようと、タマヤはとっさに近くの泥をすくってチャドの顔に投げつけた。無事逃げられた二人。だが、タマヤは家に着くと泥をすくった右手の発疹に気付く。手をよく洗って薬をつけるが、翌朝も発疹は広がっていた。放課後に病院に行くことに決めて登校したタマヤは、チャドが行方不明になっていることを知る! タマヤたちの学校のパートと森の中の研究所の公聴会のようすが交互に描かれ、徐々に恐怖感が増していくバイオ・ホラーになっている。だが、いじめられて反撃ができない気弱なマーシャル、ワルぶっているが孤独をかかえているチャド、いつも一所懸命なタマヤ、そしてその周りの学校の友だちの様子がよく描かれていて学園ものとしても十分に子どもたちの共感を誘うものになっている。ルイス・サッカーは『穴』がものすごくおもしろかっただけに、その他の作品がイマイチに見えていたが、これは思わず一気読みして楽しめた。