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弟は僕のヒーロー

 

弟は僕のヒーロー

弟は僕のヒーロー

 

 僕ことジャコモは大喜びだった。今度弟が生まれると聞いたからだ。姉と妹がいて2対1だったけど、これで2対2になって一緒に遊べる。だけど弟は特別な子だと言われる。6歳違いで生まれた弟ジョヴァンニは目が細くて首の後ろが平らで見かけも違う。僕は弟がどんな超能力が使えるんだろうかとドキドキ、ひょっとするとテレパシーが使えるのかも! そんなある日、ダウン症の本を見つけ弟がそうらしいと気づき「弟は病気なの?」とたずねると両親は「ジョヴァンニはジョヴァンニだよ。」と教えてくれた。この両親がとてもいい。裕福ではないが、ユーモアがあり、ジョヴァンニをごく当たり前の子として暖かく受け止めている。ぬいぐるみを放り投げるのが大好き。恐竜が好き。何かに夢中になると他のことが目に入らなくなる、そんなみんなとはちょっと違う弟。やがて中学校に入った僕は、弟の存在を秘密にし始める。他の子と違う弟がいることを知られるのが恥ずかしくなってきたのだ。公園で遊んでいた弟に同級生がちょっかいを出した時さえ、関係を知られるのが嫌で助けに行かなかった。友だちが遊びに来た時には部屋から出るなと命令した。だけど、そんな自分がイヤだった。そんなある日「なんでその子は変なんだ」とジョヴァンニに絡んで来た子に「知らないの? この子はグリーンランド生まれだからよ。イヌイットはこういう細い目なの。」と妹がシレっと言い返すのを見て、妹やるなと感心する。そして常にこだわりぬくジョヴァンニにはどんな世界が見えているのだろうと、弟の目線に立つことで、新しい物の見方を発見する。家で友だちとバンド練習をしているところに偶然ジョヴァンニが入ってきた時、友だちが当たり前にジョヴァンニを受け入れてくれたのを見て、自分が何を恐れていたのだろうと気付く。

これは、実話を元に1997年生まれのジャコモが19歳で書いた作品。子ども時代の記憶が鮮明なおかげで障がいのある兄弟と共に育った子どもの内面が生き生きと描かれているのが何とも魅力。高校生の時、弟と一緒に作った動画が評判をよびこの作品につながったとのこと。これからの長い人生、一家が幸せにくらせますように!