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ハンス・フィッシャー ―世界でもっとも美しい教科書

ハンス・フィッシャー―世界でもっとも美しい教科書

          著者:真壁伍郎  発行所:編集工房 くま

          発売日:2013年7月13日

 

フィッシャーやカリジェの挿絵による教科書―瀬田貞二氏が「世界で一番美しい」と絶賛したという―をつくりだす先頭に立ったのが、現場の一小学校教師だということが、感動的にすごい。
第2次世界大戦が多大な犠牲を出し、中立国のスイスに様々なバックヤードをもつ人々が逃れてきたこと、そもそも国内でも4つの公用語があること、という時代や地域性の切実さに違いはあるにしても、教科書を”本”ととらえて子どもと本との重要な出合いだと考え、そこに美しさを求めたことは、日本の教育現場では起こりえないことだろうと思ってしまう。
80ページというこの小さな冊子から、昔話やわらべうたが子どもをひきつける力、子どもの批評眼の確かさ、子どもが読みたくなる話したくなる描きたくなるものが「間違いのない道」だというフィッシャーの言葉などをかみしめて、今年も子どもと本との幸せな出合いを心したいと思います。
フィッシャーは1909年1月6日生まれ、今年が生誕110年です。1958年4月19日心筋梗塞のため、49歳という若さで亡くなっています。