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続 子どもへのまなざし

 

続 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

続 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

 

著者は児童精神科医。 『子どもへのまなざし』(2017.11.18に紹介)の反響が大きく、多くの質問も寄せられたことからそれに答える形で出された続編。育児について、母性と父性、家庭の役割について、子どもを取り巻く社会、障がいをもつ子どもについて、母親、父親、保育士、教員などからの質問に丁寧に答えていくなかで、母性的なものを失う方向にすすむ社会への危惧を繰り返し述べている。子どもは、ありのままを受け入れる母性的なもの(主に母親が得意とするが母親のみには限らない)を十分に受け取ってからでないと、社会的ルールを守る父性的なものは入っていかないのだと。
8年ほど前、佐々木正美先生のお話を聞く機会がありました。その時先生がおっしゃった、日本の青少年を取り巻く社会状況は危機的だという言葉がとてもショックでした。佐々木先生なら「大丈夫」と安心させてくれることを期待していたからです。でも改めてこの本を読んで、子どもにとっての家庭や社会をこれ以上悪くしてはいけない、1人ひとりが今できることで最善の行動をしなくてはいけないんだ、大人たちしっかりしなさいと、静かにげきを飛ばしてくださったのだとそう思うことができました。