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心のおくりびと 東日本大震災 復元納棺師

 

おくりびと」という映画で納棺師という職業が知られるようになりました。本書で紹介される笹原留似子さんは復元納棺師で「遺体を清め、棺に収める」納棺師の役割に加え、さまざまな事情で損傷した故人の顔や体を安らかに眠る姿に戻す施しをします。その技術は独学で身につけたそうです。
岩手県の内陸、北上市に住む笹原さんは東日本大震災直後から、県内の沿岸被災地をボランティアでまわり300を超える遺体を復元しました。顔をマッサージして笑いじわを再現したり自分の体温で故人の手を温めてから遺族に握らせてあげたり。それは、遺された人々が故人と納得のいくお別れをし、大切な人とのいい思い出と共にこれからを生きていけるように心を導いていく、グリーフケア(死別の悲しみに寄り添い援助すること)なのです。そして笹原さん自身も、遺族のおばあちゃんに手を握ってもらったことを心強さにして復元を続けました。時間の経過とともに復元できる遺体はなくなっていき、グリーフケアは緩和ケア医師による活動に引き継がれました。どんな立場の人も誰かの支えになれる、それは忘れないで思い続けることでも可能なのだと伝えています。