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魔女ののろいアメ(2019課題図書小学校低学年)

 

魔女ののろいアメ (PHPとっておきのどうわ)

魔女ののろいアメ (PHPとっておきのどうわ)

 

 遊びに行ってしまったおねえちゃんの分まで図書館に本を返しに行くことになったサキ。15冊も本を持って重くてたまりません。「おねえちゃんのばか」と言いながらあるサキの前に。アメ屋の屋台があらわれ、そこのおばあさんは、自分は魔女だといってのろいアメを売ってくれます。悪口を10個言いながらませると、まずくて一日気絶してしまうというのです。でも、悪口を言っているうちに、おねちゃんがやさしかったときのことも思いだしました。いつのまにかお姉ちゃんの好きなグレープ味のような見かけの呪いアメができていました。けれども、そこにおねえちゃんが迎えにきます。おねえちゃんが、おいしそうと食べようとすると思わずとめ、アメは手が届かないところにとんでいきます。サキはおねえちゃんに、あれはのろいアメだったから食べさせたくなかった、と10個の悪口を言ったことを話し、あやまりますが、おねえちゃんは悪口は頭にきてもサキをきらいにはなれないと言い、サキは自分も同じだと思います。一方、落ちたアメは手下のカラスが拾って魔女のところに持って帰ります。うっかりなめてしまう魔女ですが、気絶しないし、ところどころ甘いので首をかしげました、というお話。道徳教材のようで、「私もきょうだいとけんかしちゃいますが、きらいになれません」と、けんかのエピソードの一つくらい入れれば、感想文らしいものがかけそうな本。だけど、突っ込みどころが満載! 魔女だと言われておびえるのに「いい魔女」と言われて安心するけど「のろいアメ」売る時点で「こんなの売るなんて悪い魔女じゃないの?」と反論しないの? アメ10円なのに、自分用を買わないで「のろいアメ」だけを所持金20円全部を払って買うほど怒っていたの? おねえちゃんは昼食後すぐ消えたらしいけど、サキがいるところがわかって迎えに来れたのはなぜ?(お母さんは、帰宅していないからお母さんからきいたんじゃないはず)。本を15冊(自分用は5冊としても)返却して、1冊も借りたようすがないのも実は気になる。さらに、迎えに来て「さっさと帰ってこなくちゃ」と怒ったおねえちゃんに、「おねえちゃんの本もあったのに」と反論するサキに、「今度は私がサキの本も返しに来るから」と流されてるけど、そこは「返してくれてありがとう」か「重い思いをさせてゴメン」と言って欲しいよね。そんな態度の姉に、悪口いってゴメンとか言わずに怒れサキ! なんだか、主題(いじわるなようだけど、実は大切な存在である姉)のまわりに、エピソードをくっつけて仕上げた感じで、本当に姉妹とけんかしたリアルな悔しさや、それの克服があんまり感じられない。