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キバラカと魔法の馬 アフリカのふしぎばなし

 

キバラカと魔法の馬: アフリカのふしぎばなし (岩波少年文庫)

キバラカと魔法の馬: アフリカのふしぎばなし (岩波少年文庫)

 

 アフリカの民話は、精霊や魔神、動物や人間、死者までもが境界なく1つの世界をつくり壮大な存在感を放っている。太田大八さんの力強い版画がぴったり。生まれたその日からシカ、ヒョウ、イボイノシシ、ライオンと次々に動物を負かしていくスーパー怪力赤ちゃん(「動物をこわがらせた赤ん坊」)や、精霊たち相手のレスリングで負けなしの男「力もちイコロ」に驚かされるかと思えば、財産をとるか寿命をとるかで迷う心の弱い人間の姿に共感も覚える(「ニシキヘビと猟師」。この話では結論を示さず聞き手に答えをゆだねているのも珍しい)。また、スワヒリ人はアラビア文化の影響を強く受けているそうで、「魔法のぼうしとさいふと杖」では怪鳥に忍んで無人島を脱出する場面が、まるでシンドバッドの冒険のよう。全13話を収めている。