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むぎばたけ

 

むぎばたけ (日本傑作絵本シリーズ)

むぎばたけ (日本傑作絵本シリーズ)

 

 満月の夜、散歩にくり出す小さな動物たち。ハリネズミは、自分だけの歌を口ずさんでごきげん。「お月さんのランプに お星さんのロウソク 夜ごとはるばる さまよう おいら」。月夜に少しずつ伸びるムギの穂を見るのが楽しみなのだ。ノウサギのジャックじいさんと、カワネズミも合流してコムギ畑を目指す。
草地をしっとりぬらす露は真珠のよう。スイカズラやノイバラは甘い香りを漂わす。一面に揺れるムギの穂はまるで海のさざなみ。アトリーの描く情景に耳を澄ますと、風や光、香りを感じ、ムギの歌を聴いている・・・そんな小さな動物たちだけの時間が本当にありそうに思える。加えて、片山健さんの”青”が、夏の月夜にこんなにぴったりだったとは!
「あたたかい、かぐわしい夏の夕べ。」という言葉で始まるこの世界を伝えたいばかりに、文庫のおはなし会で読み聞かせてみたことがありました。読書家の小学3年生男の子がじっと最後まで聞いてくれ、とても静かな時間が流れました。