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ぼくたちは幽霊じゃない

 

ぼくたちは幽霊じゃない (STAMP BOOKS)

ぼくたちは幽霊じゃない (STAMP BOOKS)

 

 アルバニアで仕事が見つからず、イタリアに密入国してミラノで仕事をしている父さん。母さんは父さんのところに行くために7歳のぼくことヴィキと5歳の妹ブルニルダを連れ、海を越える。海を渡る不法入国だ。ギリギリまで「客」を乗せ、海が荒れると沈没を避けるため、他に知り合いがいない乗客の一人を海に放り込む斡旋屋。やっとたどりついたイタリアで、幸いに親切な老夫婦に助けられるが、父さんが住むミラノにたどり着くと、そこは街はずれのバラックで、父と叔父は水道さえない暮らしをしていた。不法滞在の弱みに付け込み、給料日に逮捕しては働いて手に入れた金を巻き上げる警官。手付金をちょろまかす不動産屋。そうした中でも、公立学校の先生たちは、全ての子どもの教育の権利を守るためにヴィキを受入れてくれる。執拗な不法移民取締り、ちゃんと仕事をして暮らしていきたいだけなのにという嘆き。ヴィキたちは、街を歩くとハンドバックをヴィキたちと反対側に持ち変える人々に出会う。実際ヨーロッパに旅行に行く時の注意で「外国人のすり集団に注意」と言われるし、ものごいもいる。実際ここまで過酷に扱われたら、反撃したくなるのも当然ではないだろうか? やけになってひったくりをしたり、盗む人間が出てきてもおかしくない(ヴィキたちは耐えているが)。そして外国人はコワイという感覚の悪循環がうまれる。ヴィキは、イタリアのテレビを見てネコに銀の皿で缶詰を食べさせている国なら、自分たちも豊かに暮らせるだろうと信じてやってきて、現実とのギャップにショックを受ける。この物語は実話をもとにしたものだがいうが、日本でも現在起こっている出来事かもしれない。ヴィキのために、私たちは何ができるのだろう?