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運命の子供たち

 

運命の子供たち (心の児童文学館シリーズ (3-2))

運命の子供たち (心の児童文学館シリーズ (3-2))

 

 トルコのウィーン包囲戦という歴史的出来事を1682年8月6日~1683年9月12日までの期間の中で描く。作者は1929年生まれ、戦時下を知っているせいだろうか? この作品には単なる戦争の悲惨を越えた妙なリアリティがある。攻める側、包囲される側両方の心の動きが語られている。戦争の嵐の中で、真剣に兵士として生きている少年の姿、包囲下という非日常によって通常の規制が破られ、一種の解放感を味わう若者たちの姿など、ここにあるのは続く「生活」の問題であり、だからこそこの作品が私たちをひきつけるのかもしれない。