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おまもり ホロコーストを生き抜いたある家族の物語

 

おまもり―ホロコーストを生きぬいたある家族の物語

おまもり―ホロコーストを生きぬいたある家族の物語

 

ドイツの小さな町で穏やかに暮らしていたマリオンの家族は、ナチスドイツの台頭の中でユダヤ人であることに身の危険を感じる。まずアメリカに渡ることを計画し、オランダにたどりついて難民として受け入れられ、アメリカに向かう船を待つ。しかし、乗船前にナチスはオランダも支配下に治めた。一家はドイツの捕虜交換の要員としてイスラエルに渡ることを願いベルゲン=ベンゼン収容所に向かうが、連合軍到着の直前にチフスが蔓延する死の列車に乗せられる。約2週間後にやっとソ連軍によって助けられる。子どもだったマリオンの視点から語られる体験記。家族4人は終戦まで生き延びたのに、間もなく父親がチフスに感染して死亡。最終的には渡航費をすでに払っていたことと親戚がいたおかげでアメリカに渡り、そこで生活できるようになる。なんとか、脱出しようとする試みがなかなかうまくいかないようす。にもかかわらず、楽しみを見つけようとする頑固なマリオン、やさしい兄アルバートなど家族のようすが生き生きと語られる。いつも思うのは、ユダヤ人がこれほど過酷な状況にいたのに、それがとおってしまったという恐ろしさだが、とりあえず日常に振り回されている私も、今、不条理に直面している世界の中の人々に目をむけていないのではないか?だとすればどうすれば良いのか? と問われている気がする。