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サンゴしょうのひみつ

 

サンゴしょうのひみつ

サンゴしょうのひみつ

 

ニュージーランドの作者によるフィリピンの島を舞台とした、ちょっと神話的な物語。ジョナシは、狩りに連れていってもらえない悔しさで海に出た時、真っ白で巨大な海亀に出会う。最初は捕らえようとしたジョナシだったが、魅せられてなんとか友だちになろうと考え、エサをやってついになつかせる。実は赤ん坊のころ一人カヌーに乗って流れ着いたジョナシは耳がきこえないため口がきけない少年だった。母親として育てたルイザは溺愛したが、村人たちはジョナシを軽んじ、恐れた。干ばつと巨大なモンスーンにより村は大きな被害を受ける。村人たちは、不吉な出来事をジョナシのせいにする。族長の息子アイサキは、セブで学校に行った経験もあり、ジョナシの責任ではないことを理解し、セブの聾学校にジョナシを行かせようと考えるが、白い巨大海亀のせいで、ジョナシは一層悪魔扱いされて危機が訪れる。耳が聞こえないために周りのことをよく理解できないジョナシの孤独と純粋さが印象的。悲劇的とも神話的ともいえるラストは評価が分かれるところではないか? 私個人としては、もう少し、この世界でジョナシに新しい道が開けて欲しかった。