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生き延びるための作文教室 (14歳の世渡り術)

 

生き延びるための作文教室 (14歳の世渡り術)
 

 学校空間で「自由に作文を書く」というのは、「 」付きの自由でなくてはならない。でも、それにしばられると面白いものが書けない、それでは学校というガラスの壁のある中で、安全に個性的に見える作文を書くにはどうしたらよいか? というのがこの本の主題だ。「個性的な」ではなく「個性的に見える」ところがまさにミソ。とても論理的、実践的に説明されているので、作文の課題が出される入試を受けなければならない中高生にはとても有効な本になっている。「書く」だけではなく「読みとり」にも有効! 例えば「だからこそ」はポイント。そこから結論だが、逆にいうと「だからこそ」でいいかげんな論理をまとめられるので注意、という具合だ。羅列的に述べる「ストーリー型」ではなく、感情の動きの理由がわかる「プロット型」にしよう、二項対立型で描き、あえて普通だと支持されないものもしくはマイナーなものを支持する展開にしながらも、学校の許容範囲の結論に持っていくテクニックなど、実際にやってみたら作文の点数が上がりそうだ。だがこの本の魅力は、いかにも学校に迎合する作文指導では終わらない。そうしたものを書く一方で、先入観にとらわれずに細部まできちんと文学を読む練習をすることで感性を磨こうという、読者が学校を卒業してからも生涯有効なアドバイスを示してくれている。ちなみいに、著者は作文や感想文ではなく、学校では「説明文」を書く訓練をするのがよいと提唱しているが全く同感。最も、説明文を書いたり読んだりする能力が高まると、スマホでしょっちゅう出てくる利用規約の文章の質が上がってみんな簡単にOKにチェックしてくれなくなって困るのかもね(笑)