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道草いっぱい

 

道草いっぱい

道草いっぱい

 

 村の小学校からの帰り道のこと。桶屋さんではタンコタンコと竹をたたく音がひびき、お菓子屋さんでは長いひもが小さな飴になっていく。染物屋さんに畳屋さん、ちょうちん屋さん、豆腐屋さん。ぼくたちが欠かさずのぞくのは看板屋さん。たくさんの絵筆、本物のような絵が憧れだった。耳の聞こえないおじさんがやっているゲタ修理屋さんの隣では片足をなくしたおじさんが米をついて精米している。

村を通らないで山道から帰るときは、樟脳工場の香りをかいで木っ端を蒸すためのかまどの火にあたる。水車小屋の大きな地響きのような音。お百姓さんの様々な作業には興味が尽きない。

「私たちは帰り道で、大人になるためのさまざまなことを学ぶことができました。」という結び。なんという豊かな学びでしょうか。原題”PLENTY TO WATCH”を「道草いっぱい」と作者の息子が訳したのも、そんな思いがあるのではと感じます。(は)